研究課題
本研究では、細胞分裂阻害活性のうち、細胞骨格のアクチンとタンパク合成に対して阻害活性を示すものに的を絞って研究を行った。1)アクチンを標的とするものについては、先にアクチンに対する結合部位を明らかにしたkabiramide Cを素材に蛍光官能基を導入したものを作成した。これを培養細胞に入れると予想通り膜状仮足部分が染まることを確認した。次に、アクチンを標的とする二量体マクロライドであるswinholide Aがアクチンとどのように結合しているかを共同研究者のRaymentらとX線結晶解析を行って明らかにした。その結果、trisoxazole系マクロライドと同一のところに結合することが判明した。2)タンパク合成阻害剤についての研究は、海外共同研究者のMcGill大学Pelletierと行った。まず、ホタルとウミシイタケのluciferaseを組み込んだmRNAを作成した。これに細胞抽出液とサンプルをインキュベートし、発光で活性の有無をみた。数百のサンゴ礁生物抽出物を検索したところ、ヤギ類の一種Isis hippurisの脂溶性分画がcap構造を有するmRNAに対してだけ阻害活性を示した。I.hippurisからは先に我々が細胞毒性成分としてhippuristanol類を報告しているので確認したところ、エキスと同様の阻害活性を示した。その後、Pelletierらによる詳細な生化学実験により、hippuristanolがeIF4A(RNA helicase)を標的とすることが特定され、細胞毒性物質として報告してから20余年後に活性機構が明らかにされた。特にfreeでもcomplex中でもeIF4Aの活性を阻害する初めての薬剤であることから、今後試薬として使われていくものと期待される。また、いくつかの誘導体を作成して構造活性相関を検討した。
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Nature Chemical Biology 2(in press)
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