研究概要 |
本課題研究では、(1)抗酸菌に対する抗菌活性を示すツベラクトマイシン類の全合成、(2)グラム陽性菌に対する抗菌活性を示すピロシジン類および抗腫瘍性を示す類縁化合物GKK1032類の全合成、および(3)ヒト乳癌細胞に対し細胞障害作用を示すスピキュロ酸Aの全合成について検討した。 (1)ツベラクトマイシン類に関してはツベラクトマイシンAの高立体選択的な全合成が完成している。すなわち、上部および下部セグメントに2分割し、それぞれをmethyl(R)-lactateと(R)-diethyl malateより立体選択性にて合成した。この際下部セグメント合成の鍵となった分子内Diels-Alderは、完全にendo-およびπ-面選択的に進行し、ツベラクトマイシンAが有する立体化学と同一の縮環立体化学を備えた付加体を、唯一の生成物として与えた。両セグメントはStille反応に引き続く向山マクロラクトン化にて連結され、その後の脱保護にてツベラクトマイシンA全合成が完了した。この全合成経路に基に、類似のセグメント合成を経てツベラクトマイシンB,DおよびEの全合成も完了した。 (2)ピロシジン類とGKK1032類の全合成に関しては、2-methyl-1-3-pentadieneとmaleic anhydrideとのDiels-Alder反応にて得られる置換シクロヘキセン誘導体(C環部前駆体)より出発し、A/B環構築のための分子内Diels-Alder反応基質を光学活性体として合成し、ついで立体選択的環化反応を経て、GKK1032類と同一の立体化学を有するA/B/C環部を合成した。 (3)スピキュロ酸Aの合成も、基本骨格形成のために分子内Diels-Alder反応を鍵行程としているので、そのための基質合成を既知の(R)-2-ethyl-3-hydroxybutanal誘導体より検討している。
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