フォモプシンAは、Phomopsis leptostromiformisより単離されたかび毒である。チューブリンに結合して微小管形成を強力に阻害する有糸分裂阻害剤であり、抗腫瘍薬のリード化合物として期待されている。その構成成分が全て異常(非タンパク性)アミノ酸からなる特異な骨格を有している。この化合物の合成研究は、天然に存在する異常アミノ酸含有ペプチド性医薬品の合成研究に大いに役立つと考えられるので、その全合成と各種類縁体の合成を目的として研究した。鍵反応は、側鎖部分に存在する3連続デヒドロアミノ酸の構築、環状部分に存在するエーテル結合の構築と環化反応である。現在までに、酒石酸ジエチル、threonine、4-hydroxyproline、2-pentyn-1-ol、serine、vanillinを出発物質とする各部分の合成、それらの連結による側鎖部分の合成、および側鎖部分を含む環状部分環化前駆体の合成に成功した。 ラクトナマイシンは、MRSA、VRE耐性菌に有効な抗生物質であり、6つの連続した環骨格(A〜F環)にロジノースが配糖化した特異骨格をもつ。左側部分として、新規に開発したNaBH_4-CoCl_2-ClCO_2Meを用いたone-potでのニトリルの還元的メトキシカルボニル化反応を含む9工程で芳香族ジカルボン酸を合成した。右側部分として、3つの異なるハロゲン原子で置換された芳香族化合物から、選択的エポキシ化を含む数工程でキノンエポキシドを合成し、無水ホモフタル酸とのDiels-Alder反応によりBCD環モデル化合物の合成に成功した。
|