研究概要 |
コリラジンはSchmidtらによりマメ科植物ディビディビ(Caesalpina coriaria)から単離されたエラジタンニンで,MRSAに対するβ-ラクタム系抗生物質の効果の増幅作用をはじめとして,多様な生物活性が報告されている。構造的にはグルコースの3位,6位にヘキサヒドロキシジフェノイル(HHDP)基を有しており,グルコース部分は,アキシァル・リッチなイス型(^1C_4)か,ねじれ舟型(B)配座で存在する。しかし,このようなグルコースが環反転した^1C_4/B-エラジタンニンは,多数の化合物が単離,構造決定されているにもかかわらず,未だ合成されていない。今回,コリラジンの初めての全合成を行った。 合成は,ピラノース開環,HHDP基の構築,ピラノース再閉環という,これまでに私たちが開発したグルコースの3,6位水酸基を架橋するための合成経路と,Feldmannらが開発したガロイル基を酸化的にカップリングさせる方法を組み合わせて行った。この方法で得られた化合物は,多くの位置異性体混合物であったが,各異性体の分離操作は行わずに最終生成物へと導き,最後にHPLCを駆使して目的化合物を単離した。本合成は,単にコリラジンの初めての全合成であるだけではなく,数ある^1C_4/B-エラジタンニンの最初の全合成である。しかし,今のところ全収率などの問題点を多く残している。今後,位置異性体が生じないように,基質に対称性を持たせたガロイル基の酸化的カップリングを開発し,より効率的なコリラジン合成を行う。
|