研究概要 |
フェノチアジン(PT)あるいはterpyridine(TPy)を主鎖末端に持つ感熱応答性高分子(TRP)を金ナノ粒子に修飾し、感熱応答ブロックの会合あるいはTPy錯体形成を利用して、溶液中あるいは基板表面上に形成した金ナノ粒子とレドックス基から構成される三次元空間において、レドックス基(PT,TPy錯体)の電子移動反応を解析することを目標に、本年度は以下の成果を得た。 1)Tpyを末端に持つTRPにおける感熱応答ブロックの相転移温度は20〜26℃であった。Ru(TPy)_2を介してTRP2分子を結合した複合体中のRu(TPy)_2ユニットは水溶液中、0.98 Vvs.Ag|AgCl付近で酸化還元し、酸化ピーク電流値から見積られる拡散係数Dは10^<-7>cm^2s^<-1>前半の値であった。電荷を持つRu(TPy)_2ユニットは感熱応答ブロックの相転移を阻害する可能性があり、電子移動空間構築に用いる高分子の分子設計に注意を要することがわかった。 2)PTとSH基を両主鎖末端に結合したTRPを合成し、それを固定化した金基板表面の水に対する濡れ性やPTのレドックス特性の温度依存性について検討した。分子量3000のTRPの場合、基板表面における水の接触角は36℃付近で47°から60°に不連続に変化した。この表面の親疎水性の温度変化は可逆的に起こり、高分子の脱水和と同時に起こるコイル-グロビュール転移を反映している。表面における転移温度は水溶液中よりも高温にシフトし、固定化TRPの混み合い度が大きいほど高い傾向が得られた。TRPを介して表面に固定化されたPTのレドックス特性も温度依存性を示し、温度上昇に伴いレドックス活性なPTが徐々に減少し、転移温度以上でほぼ一定になった。PTが疎水性のTRPグロビュール中に取り込まれるため不活性化したと考えている。
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