研究課題
我々は、既に重水水熱条件(重水中150-250℃・40気圧程度)で飽和炭化水素の水素-重水素交換が、遷移金属触媒存在下で進行することを明らかにしている。しかしこの高温・高圧の条件では、有機化合物の種々の官能基が損なわれてしまうことがある。これは、本方法の重大な欠陥であるともいえる。そこで、官能基・位置選択的重水素化を可能にすることと、我々の重水素化反応が電子材料に使用される種々の複素環化合物にどこまで適用できるかを明らかにすること、これらの二点を目標とし研究を行った。1)ルテニウム触媒を用いるとアルケンに対して、ヒドロメタル化が進行し、同時にβ脱離することで、軽水素-重水素交換が起きる。この反応は、機構から考えても理解できるように飽和炭化水素では進行しない。また、興味深いことにミセル形成剤であるSDSを加えると、交換効率は飛躍的に増加した。この結果は本交換反応におけるSDSの添加効果を示した最初の例となった。2)複素環化合物の重水素化軽水素-重水素交換反応の鍵となる反応は、C-H結合活性化である。反応の経路として、重水に対して白金、パラジウム等が酸化的付加を行いそれに続いて生じるカチオン種がC-H結合活性化を行い最後に還元的脱離が起こるというものを考えた。実際、白金触媒を用いて芳香族化合物の重水素化を検討したが、それらの化合物においては、直接的なC-H結合活性化だけでなく、Friedel-Crafts型の反応も可能である。結果的に複素環化合物において完全重水化体を収率よく得ることができるようになった。反応は、水熱反応専用オートクレーブ中に基質と2-5mol%の酸化白金を加え重水中で250℃に加熱することで行い、得られた生成物の重水素化率は重水素核NMRにより求めた。これらの複素環化合物の中には、光学/電子材料として有用なものも多い。
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