ニッケル(0)錯体にアルデヒドやケトンが容易に配位する事を利用して種々のアルデヒドニッケル(0)錯体、ケトンニッケル(0)錯体を合成した。合成した錯体のうちリン配位子としてDPPFを有しベンズアルデヒドが配位した錯体は多様なルイス酸と反応し付加物を与えた。ここで注目すべきデータとしてジアルキル亜鉛もルイス酸として作用することは知られていたもののそのルイス酸性を見積もることは不可能であった。これは従来法の限界であった。というのも、ジアルキル亜鉛だけではフリーのアルデヒドやケトンのカルボニル酸素に強く配位できないためである。しかし本研究で開発した方法を用いることで弱いながらもジアルキル亜鉛にルイス酸性が認められる事が明らかとなった。また、その他のルイス酸の強さに関しては概ね経験的に知ちれているものと一致しており本研究において合成したニッケル錯体がルイス酸性評価システムとして有効であることを示したデータであると考えている。 最近、ニッケルを触媒とするアルデヒドやケトンの不斉求核付加反応が行われるようになってきた。これには、単座の不斉リン配位子が有効であった。しかし、高い不斉誘導を達成するには試行錯誤により反応を精密化しているのが実情である。本研究課題により達成したニッケル錯体を不斉単座リン配位子の不斉認識能評価に適用するため単座リン配位子での有効なニッケル錯体システム構築を行った。このシステムでは不斉配位子を用いた場合には生成する可能性のある錯体の種類が多くなるためにニッケルとアルミニウムが1/1で構成された錯体を構築する必要がある。しかしながら、単座不斉リン配位子の評価システムとして本研究で取り扱った錯体が有効であることを示しており今後の展開が期待できる。
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