1)人工テトラピロール系色素の1つであるポルフィセンに電子吸引性置換基として臭素およびスルホン酸基を導入した化合物を合成した。また、これらのポルフィセン誘導体にコバルトおよび鉄などの金属イオンを配位させた錯体を合成した。臭素基の導入によりコバルト錯体の酸化還元電位はアノードシフトし、中心コバルトのルイス酸性が増し軸配位能力が増大した。 2)臭素化ポルフィセンのコバルト錯体の酸化反応活性を検討した。基質としてアルキルビニルエーテルを用い、アルコール存在下でCo(III)錯体を作用させると、アルコールの付加反応を伴い、相当するアセタール型のアルキル錯体が生成した。これに好気条件下で光照射を行うと、アルキルパーオキソコバルト錯体を経由して、相当するアルコールおよびアルデヒドが生成した。本触媒反応は、付加および酸化のタンデム反応であり極めて興味深い。本触媒反応は、臭素が1つまたは2つ置換基として導入した錯体で活性が高かった。 3)ポルフィセンにモリブデンを導入した錯体の合成に成功した。モリブデンはMo(V)錯体として単離でき、X線構造解析から軸配位子として酸素と塩素が結合していることが明らかになった。本モリブデン錯体をアルコールに溶解し、脱気条件で可視光を照射すると、Mo(IV)錯体に還元された。Mo(IV)錯体は酸素により自動酸化されてMo(V)錯体にもどるので、可視光と空中酸素を利用した酸化触媒としての利用が期待できる。 4)天然のテトラピロール金属錯体の1つであるビタミンB12誘導体をゾル-ゲル法により電極表面上に固定化した修飾電極を作成した。本修飾電極は酸化還元活性を有しており、有機ハロゲン化物の還元二量化反応などの触媒として利用できることが明らかになった。
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