π共役有機配位子を用いて高分子主鎖に金属イオンを導入すれば、電子移動性に優れた高分子が得られるだけでなく、電気や光によって金属や配位子の電子状態を変化させることで電子・光物性や磁性を制御できると期待される。 ポテンシャル勾配を有する特異構造高分子を設計・合成し、高分子内ナノ空間における金属イオン及びクラスターの自在集積の実現を目的として、棒状の金属複合高分子の合成に成功した。ターピリジンと2価の鉄イオンからなる錯体はMLCTに基づき青色を呈することが知られている。そこで、ターピリジル基を両末端に有するビス(ターピリジル)ベンゼンと酢酸鉄(II)を混合することで、濃青色の高分子錯体を得た。この高分子錯体は、サイクリックボルタンメトリーにおいて、鉄イオンのレドックスに基づく可逆な酸化還元波を示した。さらに、この高分子錯体をITO基板上にスピンキャストし、有機溶媒中で電位を印可すると鉄イオンの価数の変化に応じて膜の色が濃青色から無色へと変化することを見いだした。このエレクトロクロミック変化は高速かつ可逆であった。一方、酢酸コバルトとビス(ターピリジル)ベンゼンからなる高分子錯体では、赤色に呈色することを見出した。さらに、酢酸鉄と酢酸コバルトを導入した高分子錯体を合成したところ、単独のポリマーでマルチカラーを表現できるエレクトロクロミック材料となることを発見した。さらに、有機配位子に電子吸引基を導入することで、高分子錯体における金属イオンの酸化還元電位や呈色の波長をコントロールできることに成功した。
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