本研究は、計画研究エで行われる海底電位磁力計を用いた海底電磁気機動観測によって取得される海底MTデータを解析し、フィリピン海上部マントルの電気伝導度異方性を明らかにすることを目的としている。平成17年度においては、1)上記観測航海に参加し、データ取得に貢献すること、2)一年後のデータ回収に備えた解析環境の整備、3)予備的シミュレーションの実施、に注力した。以下にそれぞれの詳細を示す。 1)地震研究所が新規に購入した11台の海底電位磁力計を耐圧容器の試験等を行って整備し、平成17年10月に海洋研究開発機構の研究船かいれいを用いた航海により、フィリピン海の海底に設置した。その際音響測位による設置位置の決定、観測点周辺の地形調査も行った。 2)計算機環境については、研究代表者が研究機関を移動した関係で新しく構築しなおす必要があり、本補助金およびその他の研究費を用いて新規に解析用計算機、外部記憶装置、コンパイラ等を購入した。また電気伝導度異方性構造モデリングの前段階に必要となる、地形・海陸分布効果補正のための3次元フォワードモデリングプログラムを、構築した計算機環境上でチューニングし、安定動作を実現した。これによりフィリピン海を中心とする海域の地形・海陸分布効果のモデリングを近日中に開始できる見通しが立った。 3)1次元マントル電気伝導度異方性構造に対する予備的シミュレーションを行い、予測されるデータの特徴を検証した。その結果、オリビン結晶の定向配列から想定される水平方向のみの異方性構造では、MTインピーダンスの対角成分に差異をつくることができないことを確認した。これは3次元構造と異方性構造を区別する際の重要な要素の一つとなる。 以上の成果は、本特定領域研究が主催するシンポジウムで発表した。
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