研究課題/領域番号 |
17038002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小池 洋二 東北大学, 大学院工学研究科, 教授 (70134038)
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研究分担者 |
野地 尚 東北大学, 大学院工学研究科, 助手 (50180740)
加藤 雅恒 東北大学, 大学院工学研究科, 助教授 (50211850)
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キーワード | 熱伝導 / ハルデンギャップ系 / 1次元量子スピン系 / バリスティック熱輸送 / 高温超伝導 / インターカレーション / 電気化学法 / 溶融塩 |
研究概要 |
1.S=1の1次元量子スピン系、すなわち、ハルデンギャップ系であるY_2BaNiO_5のNiを非磁性のMgで部分置換したY_2BaNi_<1-x>Mg_xO_5の大型単結晶を育成し、熱伝導率を測定した。その結果、Y_2BaNiO_5のスピン鎖方向で観測されていたスピンによる大きな熱伝導はxの増加とともに低下した。その熱伝導率から見積もったスピン励起の平均自由行程が、低温で観測される磁化率のキュリー項から見積もったスピン鎖の平均長とほぼ一致することが分かり、この系においてスピンによる熱輸送が低温ではバリスティックになっていると結論した。S=1/2の可積分な1次元量子スピン系ではスピンによる熱輸送がバリスティックになることが理論的に指摘されており、我々はSr_2CuO_3においてそれを実証していたが、本研究により、1次元量子スピン系の熱輸送は、スピン励起のエネルギーバンド幅が広ければS=1の場合でもバリスティックになりうると推察している。 2.層状ペロブスカイト型銅オキシハライドSr_2CuO_2I_2に対して電気化学法でLiをインターカレートすることにより、新しい電子ドープ型銅酸化物超伝導体Li_xSr_2CuO_2I_2の合成に成功した。7Kで超伝導を示す相と4.5Kで超伝導を示す相が得られたが、T_cの違いはLi量の違いに因るものと思われる。本研究により、Liインターカレーションが超伝導物質の探索に極めて有力であることが分かった。 3.超伝導体Ba_<0.6>K_<0.4>BiO_3の合成は、通常の固相反応法を用いると複雑な過程が必要であるが、KOHの溶融塩を用いて、260℃という低温で、わずか1分の加熱で良質な超伝導体Ba_<0.6>K_<0.4>BiO_3(T_c=28K)の合成に成功した。さらに、溶融塩を用いてBa_<0.6>Rb_<0.4>BiO_3とBa_<1-x>Cs_xBiO_3の低温合成にも成功した。前者のT_cは過去の報告と同じ29Kであったが、後者では超伝導は観測されなかった。酸素欠損が原因であると思われるので、今後、酸素アニールを施すことによって超伝導化をめざす予定である。
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