研究概要 |
1.遍歴強磁性体の異常ホール効果 様々な遍歴強磁性体(単体金属:Fe,Co,Ni,Gd、酸化物:SrRuO3,La1-xSrxCoO3、カルコゲナイドスピネル:(Cu,Zn)Cr2Sr4)における異常ホール効果を測定し、異常Hall伝導率σ_<xy>の縦伝導率σ_<xx>依存性を詳細に研究し、以下のことが明らかとなった:(1)10^4S/cm<σ_<xx><10^6S/cmの中間領域では、ρ_<yx>ρ_<xx>^2の関係、すなわちσ_<xy>=const.〜1000Ω^<-1>cm^<-1>が成り立ち、非散逸性の異常Hall効果が観測される。(2)一方、σ_<xx>>10^6S/cmの"クリーン"な系では、スピン-軌道相互作用のエネルギースケールが重要となり、散乱機構の詳細に依存して異常Hall伝導率σ_<xy>のσ_<xx>依存性が現れる。(3)σ_<xx><10^4S/cmの"汚れた"系では、不純物散乱によるdampingの効果により、異常Hall伝導率は減少し始め、実験的にσ_<xy>^∝σ_<xx>^<1.6>で良く表されるべき依存性になっている。これら電気抵抗率5桁の領域にわたる異常Hall効果の系統的な振る舞いは、バンド反発交差と不純物散乱を取り入れた"共鳴"異常Hall効果の理論によって理解することができる。 2.遍歴強磁性体の異常ネルンスト効果 異常Nernst効果とは、熱流に対して垂直に磁場を印加した時、横方向に電圧差が生じる現象であり、異常ホール効果と密接な関係がある。線形応答理論によれば、横Peltier係数α_<xy>(電流と温度勾配の比例テンソルの非対角項)とσ_<xy>の間にはMott則が成立するが、本研究によって遍歴強磁性体の異常ホール効果と異常ネルンスト効果の間にも同様のMott則が定量的に成り立つことが実験的に明らかになった。
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