梯子格子銅酸化物は3万気圧以上の高圧下で超伝導になることが知られている。研究代表者、分担者はこの物質の超伝導状態を3万気圧以上の高圧下で系統的に核磁気共鳴を行い、超伝導状態のミクロな性質を調べることを研究目的としている。研究代表者藤原直樹は高圧NMR測定全般を担当する。研究分担者上床美也は高圧セルの設計製作を担当する。初年度の研究計画では、ます高圧セルについて複数のセルを製作することであった。高圧になるほど、セルの幾何学的形状が大きく影響してくるものと思われるので、申請した消耗品の多くはこの高圧セル製作に当てる計画を立てていた。今回の新開発のセルでは、外径の大きなものを採用したこと、高圧セルの中のピストンを改良したこと、高圧セルの材料であるNiCrAlの材質改良などもあって、3万5千気圧以上の高圧下でも大丈夫な圧力セルが完成した。耐圧試験では、ルビジウム蛍光法を用いて室温で壊れない程度の荷重で調べたところ、ルビジウムR1吸収線のシフトが1.26nmであり、これは3万5千気圧に相当することが明らかになった。減圧して高圧セルの中身を調べて見たところ無傷であったため、より高圧でも大丈夫であるという確信を得る所まで至った。今後、この高圧セルを用いて梯子格子銅酸化物の超伝導状態を核磁気共鳴を用いてより詳しく調べる予定である。また、銅酸化物とは別に、バナジウム酸化物梯子格子でも6万気圧以上の圧力下で超伝導状態が現れることが知られている。この系でも、高圧下核磁気共鳴測定を予定しており、現在常圧での核磁気共鳴が完了して幾つかの興味深い現象を見出している。この物質についても今後銅酸化物梯子格子と平行して測定をする予定でいる。
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