研究課題
単位胞内に複数(4枚以上)のCuO_2面を持つ"多層型銅酸化物超伝導体"では、各層の超伝導あるいは磁気励起に果たす役割を個別に調べることは難しいが、サイト別での測定ができるNMRは有力な手法である。Hg系五層型超伝導体HgBa_2Ca_4Cu_5O_y(Hg-1245)は108Kで超伝導を示すが、3枚のIPは60K以下で反強磁性殊序を示す。単位胞内で、ナノスケールしか離れていない隣接する層で静的な反強磁性秩序と高温超伝導が共存していることが明らかになった。さらにこれと同じHg-1245の組成の試料を、還元アニールにより酸素の量を制御し、キャリヤ濃度を減らした試料Hg-1245(underdoped)においてもNMR測定を行った。内側3枚のIP層は反強磁性秩序がより高い290Kから起こり0.67-0.69μ_Bのモーメントを持っており、72Kの超伝導を担うOPでさえも、低温では0.1μ_Bの反強磁性秩序が存在することがわかった。大きな内部磁場の存在は、1枚のCuO_2面でも高温超伝導と反強磁性が共存していることを示唆している。室温から磁気秩序を示しながらも、72Kという高温で超伝導が発現することはまた驚きである。さらに比較のために、やや多めのホールがドープされているTl-1245、Cu-1245など5層型の異なる系でも同様の測定を行い、理想的な平坦性を有する多層型高温超伝導体のCuO_2面にホールをドープしたとき、反強磁性と超伝導の共存がホール濃度でどのように移り変わるのか詳細を調べている。*この内容の一部はPhysical Review Letter誌で2006年3月公表される。
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Journal of the Physical Society of Japan Vol.75 No.1
ページ: 013709
Physical Review Letter Vol 96, No.8
ページ: 87001
Physica B (掲載決定)