研究概要 |
山中は,軽元素カギ状構造物質の創製による新規超伝導体の実現を目指して、フラーレンC_<60>の3次元ポリマーの合成と物性評価を行った。3種類の結晶性3次元ポリマーの超高圧力合成に成功し、構造解析と電気伝導度、マイクロビッカース硬度の測定を行った。X線構造解析により、体心斜方格子と面心立方格子の3次元ポリマーの構造を明らかにした。 藤は、Li-ZrNCl,およびZrNClx配向試料の強磁場電気抵抗測定、および核磁気共鳴実験プローブを用いたラジオ波インピーダンス測定を行った。磁気抵抗測定および磁化率の異方性測定から,超伝導の異方性パラメータはγ>4と予想され、2次元的な超伝導が強く示唆された。 浴野はトンネル分光法により層状窒化塩化物超伝導体ZrNCl(T_c=14K)について調べ,多重ギャップの存在や電子対波動関数のs波対称性を示す事実を見出した.多重ギャップ値は2Δ=6-8k_BT_cおよび3-4k_BT_cとなり,前者は銅酸化物超伝導体の値と同程度の異常な強結合性を示し,後者は通常のBCS値程度である.このような強結合性を示す多重ギャップの起源について検討を行った. 犬丸は,RF窒素ラジカル源を装備したPLDおよびMBEによりモリブデン窒化物の薄膜合成を検討した.バルク体でも合成例の少ないβ-Mo_2N(tetragonal)の結晶性配向膜の合成に成功し,Tc=5.2Kの超伝導体であることを見出した.また,MgOおよびAl_2O_3基板上に格子歪が小さく組成が精密に制御されたNaCl型MoN薄膜の合成にも成功した。この窒化物はこれまで,高いTc(29K)を有することが予測されていたが,本研究では,Tc=4Kが観測された。超伝導特性と膜の組成と格子の歪み,格子定数との関係を実験データに基づき議論した。
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