研究概要 |
本研究では,物理条件(温度,圧力)と化学条件(ガス組成)を独立に変化させた固相-気相反応実験をおこない,反応律速過程や速度を物理化学条件の関数として求めることを目的とする.固相-気相反応実験をおこなうためには,低圧でガス雰囲気を制御できるシステムを持つガス反応装置を作成する必要がある.装置作成は困難を極めていたが,今年度後半,装置が完成した.新型実験装置は,試料設置後,約10分で実験開始可能な真空度まで到達し,数時間かかる他のタイプの真空装置とは実験効率が格段に上がる.装置開発と並行して,今年度は代表的マグネシウム珪酸塩であるフォルステライトの水素ガスとの反応を伴う蒸発の異方性を検討する実験をおこなった.固相-気相反応の異方性によって系外惑星系円盤などで観測される塵粒子の形状変化が起こるため,観測される赤外スペクトルのピーク位置や強度にも変化が期待される.水素ガス圧力・温度を制御した蒸発実験によって,水素中での蒸発の異方性は,真空中蒸発の異方性(e.g.,Ozawa et al.,1996;Yamada et al.,2006)とは異なることが明らかになった.結晶内の原子間結合ボンド強度の異方性に加えて,水素原子の表面吸着エネルギー・吸着サイト数の異方性が反映された結果であると考えられる.赤外観測から粒子形状を明らかにすることで,その塵粒子が経験した環境(温度・水素圧力)を解明できる可能性があることがわかった.結果は,38th Lunarand Planetary Science Conference(2007.3)で口頭発表し,また,結果をまとめた論文は日本惑星科学会学会誌「遊星人」で発表予定である.国際誌への論文投稿も計画している.
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