本年度はまず、原始惑星系円盤の中で惑星が形成された場合の惑星(特に、大気)の多様性に着目した。具体的には、水を獲得し居住可能な地球型惑星の形成確率に制約を与えることを目的とした。そのために、原始惑星系円盤ガスの集積過程の数値実験を行なった。得られた重要な知見は2っある。まず、円盤ガス集積にかかる時間は惑星質量に大きく依存し、観測的に知られている円盤ガスの寿命以内に大量のガスを獲得して巨大ガス惑星(木星型惑星)となりうる質量が地球質量の数倍以上であるということが分かった。つまり、地球型惑星であるためには地球質量の数倍以下でなければならない。さらに、円盤ガスを起源とする大気の毛布効果によって、地表面は溶融し、地表面に存在する酸化物と大気中の水素が反応することによって水が生成される。本研究によって、十分な水を獲得するには少なくとも地球質量の0.3倍の惑星質量が必要であることが分かった。以上の結果を論文にし、Astrophysical Journalに投稿した。 本年度はさらに、日本のすばる望遠鏡が発見したHD149026bという惑星の起源に関する研究を行なった。この惑星はガス惑星と考えられるが、その平均密度が他の系外惑星に比べて際立って高いことが知られている。そこで、その惑星の内部構造を数値実験によってモデル化し、重元素量が地球質量の50-80倍であることが分かった。さらに、様々な理論的考察から、この惑星が形成されるには、この惑星の太陽方向への落下と巨大惑星同士の衝突が必要であることを示した。この結果に関する論文もAstrophysical Journalに投稿した。
|