本研究では、円盤ガスの大局的進化及びダスト粒子がキロメートル程度の微惑星にまで成長する過程を、ガスとダストの相互作用も含めて矛盾なく解くことを最終的な目標とする。しかし、円盤全体(100天文単位)とダスト粒子のサイズ(サブミクロン)の間には大きなスケールの違いがあるため、その計算は容易ではない。そこで本年度は、最初のステップとして局所的領域での解析を行った。 円盤の一部を切り出した局所的領域では、動径・鉛直方向に周期的な境界条件が妥当となることや、高解像度での円盤ガスの三次元シミュレーションが可能であることから、このスケールでのガスの振舞いは比較的良く理解されている。降着円盤に磁場が存在する場合には、磁気回転不安定によってガスは乱流状態になる。 まずこのステップでは、乱流中で個々のダスト粒子がどのような運動をするのかを明らかにする。そのために磁気流体コードにダストの運動を追う粒子シミュレーションコードを組み込むことによって、ガスとダストの二相系を同時に扱うことを可能とした。様々なサイズのダスト同士の相対速度を詳しく解析することによって、乱流中でのダストの合体成長過程の特徴を理解することができる。これは、その後のダストの沈殿過程やガスの電離度分布を調べる際の基礎となる。 また、乱流中のダストがある特徴的なサイズの塊に成長し、これが隕石中みられるコンドリュールの起源になったとする仮説が提唱されている。実際にダスト粒子のストッピング時間が最大渦のターンオーバー時間と等しい場合には、ダスト粒子の運動はランダムウォーク的に拡散をするのではなく、ある半径に集積してリングを形成することが明らかになった。今後はさらに円盤の構造の効果等を解析に加えていく予定である。
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