惑星間空間に現存する固体微粒子群(惑星間塵雲)を観測することによって、塵雲の空間構造を明らかにし、それによって塵雲を構成するミクロンサイズの塵の起源と進化を解明する事が、本研究課題の目的である。独自に開発した視野角98度×49度の黄道光観測装置WIZARDを用いて、ハワイ・マウナケア山頂で太陽反射光(黄道光)の観測を実施している。地球軌道が太陽を周回する季節毎の観測によって、惑星間塵雲の3次元空間構造を調べてきた。また、塵雲の局所的集積(塵雲の濃淡)を調べるために、地上望遠鏡を用いて彗星軌道に沿ったダスト(彗星ダストトレイル)を観測した。観測結果を基に、トレイルに存在する塵の散乱特性やサイズ分布を明らかにし、彗星塵から惑星間塵雲への塵の供給量を推定した。これらの観測結果は、太陽系内の塵雲の解明に用いると共に、太陽系外の星周ダストディスクについて考察する際にも重要な情報を与えるものとして期待できる。 本年度は、特に彗星ダストトレイルについて成果を挙げた。彗星ダストトレイルとは、彗星から放出された直径1mm以上の粒子からなる塵雲である。我々は地上望遠鏡(木曽シュミット、ハワイ大学2.2m、CFHT)と赤外線宇宙望遠鏡Spitzerを用いて、ダストトレイルのサーベイ及び散乱特性を調べてきた。一方、トレイル粒子と見なされるmmサイズの不規則形状塵の光散乱特性を理論的に検討し、その温度や放射圧を推定した。 彗星トレイルの観測結果から、ダストトレイルの塵のアルベドは極めて低く、可視波長域でのカラーは彗星核と同じか少し赤いことがわかった。更に、ダストトレイルを持つ彗星の多くは、その核の色が非常に赤いことが判った。これらの観測結果から、ミリメートルサイズのトレイル塵の多くは、彗星核の表面付近に存在していたと推測される。
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