研究概要 |
高温形状記憶合金として特にTiAu系に着目し、第三元素添加、特にCo添加の影響について調べた。18mol%Co添加TiAuに透過型電子顕微鏡観察を行うと、マトリクスとして22mol%程度のCoを含んだB2相、および析出物として、数%しかCoを含まず60mol%程度のAuを含むB2相が存在した。この析出物は二元系では存在せず、Co添加3元合金特有のものと考えられ、また、動作特性を劣化させると判断された。さらに詳細に調べるため、種々の組成のTi-Au-Co三元系合金を作製し、900℃での熱間鍛造後、構成相と組成を同定した。その結果、TiAu-18Coで見られた二つのB2相は確認されず、マトリクス組成付近ではC11_b (Au, Co)_2Ti相とC36 Au(Co, Ti)_2相との二相、析出物組成近傍では、B19 Ti_3Au相とA15 TiAu相の二相であった。これらをまとめ、Ti_3Au-TiAu-TiAu_2-TiCo_2近傍の部分状態図を明らかにした。また、TiAu-18Coに〜400℃で時効処理を行い、300℃-1時間で良好な超弾性が得られることを明らかにした。この超弾性は空孔のクラスタリングなど、ナノレベルでの組織変化によると推察される。第4元素添加の影響としては、TiAu-CoにCr, Moなどの第四添加元素を1-3mol%添加し、変態温度と加工性の変化を調べ、少量の第四添加元素により冷間加工性も変化し、特にMo添加が有望であることなどを明らかにした。また、TiAuは加工性が悪いため、液体超急冷法による高温形状記憶合金薄膜の作製を試みた結果、形状記憶効果を有するTiAu薄膜が得られた。しかし、組成変動が大きく、動作温度の安定性に問題があること、集合組織が形成されないことなどを明らかにした。さらに、TiAuを用いた磁場駆動アクチュエータの動作機構を検討した。
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