我々はイオン液体を高分子網目に閉じ込めた「イオンゲル」を電解質に用い、両端に電極を張り付けることで電場応答性高分子型アクチュエータに適用してきた。本年度は種々の炭素材料を電極に用い、アクチュエータ特性を検討した。炭素材料は活性炭(AC)、50nmの微細孔を有するインバースオパール型炭素(OC)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、気相成長炭素繊維(VGCF)の4種類を用いた。イオンゲル膜はイミダゾリウム系イオン液体とポリフッ化ビニリデンを加熱溶解、基板に塗布することで作成した。 SEM観察とXRD測定から、本研究で用いたACとOCは粒状でアスペクト比が小さく、黒鉛構造が少ないことを明らかにした。これに対してMWCNTとVGCFはアスペクト比が大きく、黒鉛構造が発達していることを確認した。黒鉛構造が発達していることは、電気伝導度が高いことを示唆する。 どの炭素電極を用いた場合も、±1.5Vの連続矩形波電圧を印加すると、陽極方向へ一意的に屈曲し、電気伝導度が大きい炭素電極が高速応答できることを明らかにした。また、低周波数で電位を変化させた場合、表面積の大きいAC、OCアクチュエータがより大きな変位を示した。これはより効果的に電気二重層に電荷が充電されるためであると考えられる。逆に高速掃引時ではAC、OCアクチュエータの変位量が劇的に低下した。電気伝導度が低いために高速で掃引するとアクチュエータ末端まで効果的に電位が印加されないためであると考えられる。MWCNTアクチュエータは10000サイクル時に初期の70%程度に変位量が低下したのに対し、AC、OCアクチュエータは30%程度まで低下した。これはアスペクト比が大きい炭素材料の方が、屈曲を重ねる度に炭素粒子同士の接触抵抗が増大するためであると考えられる。
|