研究概要 |
我々は変位と力を両立したテーラーメード型積層圧電アクチュエータを提案した.既存の圧電アクチュエータでは,小型,低コスト,かつ変位と力を両立したアクチュエータは実現困難である.そこで我々は,2枚のバイモルフ型圧電素子を両端支持で組み合わせ,それを積層することにより,これらの問題を解決した.また,本積層圧電アクチュエータは,全体のサイズが同じでもバイモルフ型圧電素子のサイズを調節することにより,変位と力の割合を広範囲に変更可能なテーラーメードアクチュエータである.今年度は,まず,バイモルフ型圧電素子を解析し,固定条件に対する変位と力の関係を導出した.その解析結果は,バイモルフ型圧電素子の固定条件を片持ちはりから両端支持へ変更すると,変位は0.25倍になるが力は4倍になる,すなわち,バイモルフ型圧電素子を用いて力を得るためには,両端支持の方が有効であることを示した.次に,本積層圧電アクチュエータの変位と力の関係を理論的に導出した.その解析結果より,本積層圧電アクチュエータは約10×10×10mmのサイズで数100μmの変位や数Nの力を発生できることがわかった.次に,プロトタイプを製作し,その性能を評価した.その評価結果は解析結果と良く一致しており,解析結果の有効性が確認された.今後は,圧電セラミックス(PZT)中の鉛が環境問題となっているので,無鉛圧電セラミックスを用いて本積層圧電アクチュエータを無鉛で製作する.また,本積層圧電アクチュエータの実用化へ向けて,導電性テープの開発や生産性の向上を行うとともに,本積層圧電アクチュエータをマイクロバルブやマイクロステージ等のデバイスへ応用する予定である.
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