研究概要 |
液晶エラストマーは液晶分子をポリマーバックボーンに化学結合させた物質で、作成途中に応力を加えることによってサイドチエーンの液晶分子を配向させて異方性のフィルムとすることができる。このため、電界や磁界などに応答し、透明度や形状を変化させる。しかしながら、液晶分子が化学結合しており、駆動するためには非常に強い外力を必要とする。ところが、このフィルムに低分子の液晶を膨潤させると、弱い電界で応答することが見いだされた。ここでは低分子の液晶として5CB、MBBAを使用し、結合の異なった二種類の液晶エラストマー、bifunctional系とtrifunctional系の双方に膨潤させ、液晶ゲルを作成、その特性と起源を調査した。 5CBで膨潤されたbifunctional系での大きな電界応答は、バックボーンにつながったサイドのメゾゲン分子が5CBの電界応答に引きずられて応答し、均一配向するために起こるものであることが明らかになった。このため最も大きな収縮は、5CBが正の誘電率異方性をもつために、プレーナー配向したモノドメインの膨潤LCEに電界を加えるとき実現できる。この場合、一般にはサイズに依存するが、100ミクロン厚の試料で約10〜15%の収縮率が実測された。この試料の電界応答は約0.1秒の高速であることも分かった。一方、V3型のLCEでは膨潤率はbifunctional系と同じであったが、体積変化が大きく、それに反して膨潤率の異方性が小さく、x, y, zのいずれの方向にも膨潤した。それゆえ、クロスリンキングの構造と同様、同時に大きな電界効果も期待したが、この効果については逆に小さい(1/5以下)傾向が見られた。また、この際の温度収縮は液晶の秩序度の変化と比例して起こることが確かめられた。
|