研究概要 |
1.Cu基3元合金準結晶の発見 Cu_<48>Ga_<34>Sc_<18>及びCU_<46>Al_<38>SC_<16>合金において正20面体準結晶を発見した。これらの準結晶は黄金比τの3乗のスケーリング則を示し、P型に属する。また、構成元素や組成比からTsai型クラスターを含むものと推定された。前者の形成には、液体急冷法の適用が必要であった。それに対して、後者の場合は、アーク炉での溶融と冷却で準結晶が形成され、さらに600℃での時効処理後も観察されたので、安定相の可能性も含めて形成条件の詳細を研究中である。 2.Zn-Sc低温相近似結晶のX線構造解析 Zn_<85.5>Sc_<14.5>の組成をもち、良く焼鈍された1/1近似結晶は、電気抵抗の異常を伴って153Kで低温相に転移する。この低温相の構造を、92K付近での電子線回折と粉末X線回折実験によって解析した。低温相は、高温相BCCの2倍の体積の格子を持つ単斜晶で、空間群はC2/cであった。低温相では、4個のZnから成る正4面体を含んで歪をともなったTsai型クラスターが基本構造となっていた。また、このようなクラスターがC面心とc-glideに従って規則的に配置しているととが判明した。これは、近似結晶低温相においてクラスター内部の構造が観察された初めての結果である。同様の正4面体を含んだ原子クラスターは、準結晶においても存在するものと想像され、自己相似的秩序の「初項」に関する情報を得たという点で重要である。 3.Feとランタノイドの両方を含む安定準結晶:形成条件と磁性 Zn_<77>Fe_<7>Sc_<16-x>L_x(L=Ho, Er, Tm)の組成を持つP型正20面体準結晶をほぼ0≦x≦8の領域で見いだした。これらの準結晶は、すくなくとも700℃付近において安定であり、徐冷法によりmmサイズの正12面体形状の単準結晶が形成されることもあった。これらの準結晶においては、ランタノイドだけでなくFe原子も磁性に寄与していることを磁気測定の結果は示していた。また、Tmの場合、凍結温度9Kを持つスピングラス特性を示した。これらの準結晶においては、2種類の磁性元素が準周期的に配置しているはずであり、今後の構造解析が待たれる。
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