マイクロ波照射によりTiO_2-SnO_2系二成分系固溶体を合成し、Tiリッチ相とSnリッチ相が10〜30nmスケールで交互に積層したメゾスコピック組織を形成した。本系はスピノーダル分解により相分離を示す系であるが、マイクロ波照射下では平衡状態図における二相分離領域においても短時間で固溶体形成が確認された。このような平衡状態図からの逸脱は、マイクロ波照射下での選択加熱現象に起因し、マイクロ波吸収の強いSn成分が、吸収の弱いTiO_2粒子に向かって一方向拡散する反応メカニズムによるものと考えられる。異種原子価カチオンであるAl^<3+>の添加によって相分離は促進され、数分程度の短時間のマイクロ波照射によってメゾスコピック組織形成が可能であることが明らかとなった。メゾスコピック組織形成は、2.45GHz、28GHzのどちらの周波数を利用しても形成可能であった。紫外-可視拡散反射スペクトルの解析結果から、相分離の変調組織の発達に伴い、試料の吸収スペクトルが連続的に変化することが見出された。このことから、希土類イオンの添加による光学特性の発現の母体として、メゾスコピック組織形成の有効性が示された。 導電性と発光特性の両立を目指し、本固溶系に発光中心としてEu^<3+>をドープした試料を作製しTEM観察により希土類元素の添加によってもメゾスコピック組織が形成されることを確認した。また、Al^<3+>とEu^<3+>を共ドープするとEu^<3+>固溶量が増大することが判明した。SnO_2単体へのEu^<3+>ドープでは、590〜610nm領域にスペクトルをもつ赤色発光が確認されたが、スピノーダル分解により生成したメゾスコピック組織では、赤色発光は弱<なった。
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