研究概要 |
本研究では、様々な物性を発現するd電子系遷移金属元素とf電子系希土類元素とからなる複酸化物セラミックスに関して、材料の構造を結晶、ナノおよびミクロレベルの多階層で高次制御することで優れた熱電変換特性を持つ材料の創製とその機能解明を目的とする。本年度は、物質系の探索と基礎物性ならびに構造評価を中心とした研究を行い、以下の成果を得た。 (1)一連のReCoO_3焼結体(Re:希土類)の合成を行い、これらのうちある範囲の希土類がペロブスカイト型構造を形成することを確認した。Re=Pr, Nd, Eu, Tb, Dyについて精査を行い、典型的な等軸状粒子多結晶体の粒成長・緻密化挙動により支配され、焼結温度が低い場合には多孔体構造を取ることを明らかとした。 (2)これらは何れも半導体的挙動を示し、また室温での熱伝導率は多孔体構造のため低い値を示した。一方高温では10^<-3>Ωcmのオーダーの低い抵抗率を示すことを確認した。 (3)中温度以上では熱伝導率が上昇するものの、依然十分に低い値(2W/mK以下)であることを見出し、低温側では格子により、また高温ではキャリア成分の寄与によるものと考察された。 (4)導電率が中温度以上で高いことなどから、熱電変換材料として良好な性能を持つものと考えられた。特にPr、Nd系が導電率および熱伝導率の観点から良好な特性を示すものと期待された。 (5)等方的な結晶構造であるにも関わらず、高温で酸化物p型半導体セラミックスとしては高い性能指数を示すことを見出した。 (6)結晶構造、電気物性、熱伝導性など一連の物性は、導入する希土類イオン半径に依存し、これが大きい場合に立方晶(Pr, Nd)、逆に小さい場合には斜方晶(Eu, Tb)結晶となること、導電率はイオン半径が大きいほど高いこと、逆に熱伝導率は低下することを見出し、熱電特性が配意多面体のひずみ構造に依存していることを見出した。
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