研究概要 |
本研究では、ユーロピウム(II)と硫黄から構成されるEuSナノ結晶の粒径制御を試みた。この粒径制御されたEuSナノ結晶のファラデー効果を検討することにより、ファラデー効果波長の微細制御を試みた。さらにEuSナノ結晶の発光特性についても検討を行なった。 金属ユウロピウムを液体アンモニア(-78℃)に溶解させ、この反応溶液中に1,2,10当量のチオウレアを導入した。その後1時間撹拌し、アンモニアを常温で留去することで紫色の粉末サンプルを得た。必要に応じて過剰量のチオウレアを取り除くため、メタノールを用いて遠心分離とデカンテーションを5回行い、窒素気流下で乾燥することで粉末サンプルを得た。得られた粉末サンプルはそれぞれXRD, FT-IR, UV-Vis測定により同定を行った。 さらに、EuSナノ結晶の新規合成法として「Single Source Precursor法」を初めて試みた。まずSingle Source Precursorである(PPh_4)[Eu(Et_2dtc)_4]をアセトニトリルに溶解し、マイクロ波による加熱反応を行った。この反応によって得られた溶液を遠心分離により精製し、クリーム色の粉体性生物を得た。サンプルは透過型電子顕微鏡(TEM)によって同定した。 全てのサンプルにおいてEuSのピークパターンが観測された。これらEuSナノ結晶の平均粒径はXRDおよびTEM測定から見積り、それぞれ14nm,8nm,7nmとなった。本検討により、量子サイズのEuS粒子を合成・粒径制御することに成功した。得られたEuSナノ結晶サンプルを分散させたプラスティック(PMMA)薄膜においてFaraday効果の検討を行ったところ、Faraday効果測定の結果、光吸収に対応した波長領域において大きなFaraday回転を示すことがわかった。すなわち、粒径が小さくなるほどFaraday回転を示す波長も短波長側へシフトすることが明らかとなった。
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