熱電変換材料は、ゼーベック効果やペルチェ効果を利用して熱エネルギーと電気エネルギーを直接相互変換する材料であるが、近年、エネルギー・環境問題への関心の高まりと相まってその実用化が期待されている。本研究では、希土類プニクタイド(スクッテルダイト)CeFe_3CoSb_<12>について、複合体化することにより熱電変換材料としての性能の向上を試みた。熱電変換材料の性能は無次元性能指数ZT=S^2T/(ρκ)(Sはゼーベック係数、ρは電気抵抗率、κは熱伝導率)によって評価されるが、ρおよびκは材料の微細組織の影響を強く受けるため、複合体化することにより性能の向上が期待できる。真空封管中における固相反応によって合成したCeFe_3CoSb_<12>とFeSb_2をモル比で1-x:x=0.9:0.1〜0.8:0.2の比になるように秤量し、乳鉢により混合した後、ホットプレスにより加熱して複合焼結体(CeFe_3CoSb_<12>)_<1-x>(FeSb_2)_xを得た。x=0.1の試料のゼーベック係数は無添加のCeFe_3CoSb_<12>とほぼ同等の値であったが、x=0.2の試料ではCeFe_3CoSb_<12>より減少した。電気抵抗率は一般にFeSb_2の添加量の増加とともに減少した。熱伝導率はx=0.1の試料でCeFe_3CoSb_<12>の値を若干下回ったが、x=0.2の試料ではかなり増加した。FeSb_2添加による熱伝導率の減少は異相界面の増加によるフォノン散乱増加によるものだと考えられる。FeSb_2添加量の増加に伴う熱電特性の変化は添加したFeSb_2の物性(低ゼーベック係数、低電気抵抗率、高熱伝導率)による影響であると考えられる。以上の結果からZTを計算したところ、x=0.1の試料で773Kにおいて0.77が得られ、無添加のCeFe_3CoSb_<12>の値を若干上回った。
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