研究課題/領域番号 |
17042025
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
奥谷 猛 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 総括研究員 (90356709)
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研究分担者 |
永井 秀明 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門ナノ移動解析研究グループ, 主任研究員 (40344139)
間宮 幹人 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門ナノ移動解析研究グループ, 研究員 (10358062)
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キーワード | 超磁歪材 / 結晶配向 / 組織配向 / 微小重力 / 一方向凝固 / 磁場 / サマリウム鉄 / ラーベス相 |
研究概要 |
バルク状の高性能超磁歪材を製造するためには単結晶育成もしくは組織・結晶方位制御が必要である。組織・結晶方位制御には微小重力環境下での一方向凝固が有効である。また、TbFe_2、Tb_<0.3>Dy_<0.7>Fe_<1.9>、SmFe_2超磁歪材の容易磁化軸は<111>であるので、磁場も組織・結晶方位制御には有効と考えられる。1〜10秒の落下施設で得られる微小重力環境下で一方向凝固を磁場中で行うことにより、<111>面に結晶が配向した薄片が並んだ構造のTbFe_2、Tb_<0.3>Dy_<0.7>Fe_<1.9>を作製することに成功した。本年度では、資源的、経済的に優れた元素であるSmとFeから成るSmFe_2超磁歪材について、微小重力環境を利用して一方向凝固と磁場を利用して磁歪方向の<111>に配向したラーベス相SmFe_2超磁歪材の合成を行った。 微小重力下磁場を印可しないSm-2Fe合金融体の一方向凝固によりSmFe_2単相が製造できた。SmFe_2は薄片が冷却方向に並んだ組織で、<111>方向に配向していた。SmFe_2凝固反応は、融液中にFeの核が生成し、この核と融液中のSmが反応し、Sm_2Fe_<17>になる。さらに、Sm_2Fe_<17>は融液中のSmと反応し、SmFe_3になり、次に、SmFe_3は融液中のSmと反応し、SmFe_2となる。微小重力下では融液中に対流がなく、最初にできたFe核は非常に小さく、かつ、動き回ることはないので、非常に小さい核が次々と核の周りの融液中のSmと大きい反応速度で反応する。したがって、微小重力下ではSmFe_2単相が得られたものと考えられた。微小重力下0.04Tの一方向凝固により得られた凝固物は薄片が冷却方向に並んだ組織を示したが、結晶方位の配向は見られなかった。微小重力下で0.08〜0.12Tの磁場中、及び、常重力下0〜0.12Tの磁場中一方向凝固により得られた凝固物は配向した組織を持たず、Sm_2Fe_<17>とFeの相からなっていた。これらの生成物は磁場と対流が融液の不均一性をもたらし、FeとSm_2Fe_<17>を経由するSmFe_2へのSmとの反応を阻害することがわかった。<111>結晶方位制御SmFe_2の磁歪率は外部磁場1000エルステッドで3200ppmと従来の多結晶SmFe_2(2300ppm)より高く、外部磁場に対する応答性も飛躍的に向上した。
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