リニアコライダーにおける実験に用いる測定器の一部である、バーテックス検出器用のセンサーとしての全空乏型高精細画素CCDの開発を目指し、その基礎的研究として、標準的なピクセルサイズの全空乏型CCDの開発と、その有感領域での電荷の拡がりおよび空乏層を移動する電荷の磁場中でのローレンツ角の研究を行うのが本研究の目的である。 ローレンツ角は空乏層の電界強度に依存し、電場が強いと電荷の移動度が減少しローレンツ角も減少すると予想される。全空乏型CCDのローレンツ角を予想するため、有限要素法による計算によって、CCD内部の電場計算を簡単なモデルに基づいて行った。その結果、空乏層の厚みが15ミクロンの場合、空乏層内の電場はローレンツ角を抑制するのに十分な1x10^4V/m程度の強度をもつことがわかった。この結果から、3テスラの磁場中において、ローレンツ角は約12度になると予想された。この程度の大きさであればバーテックス検出器として用いるのになんら問題は生じない。 このローレンツ角および電荷の拡がりを実験的に確認するため、緑色のYAGレーザーを用いた測定システムを構築した。ピクセルサイズ(24ミクロン)よりも幅の狭いレーザー光の帯をCCDの裏面に照射し、その信号が表面の電極に到達するまでの拡がりを測定する。また磁場中に置いた場合の到達する位置のずれからローレンツ角を測定する。裏面照射型の全空乏型CCDの開発は当初の予定よりも遅れ、3月に納品された。本報告書執筆時には間に合わなかったが、近日中にこれらの測定は行われる予定である。
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