本研究では、骨髄ストローマ細胞による造血幹細胞の自己複製制御メカニズムの解明を目的として、我々が以前同定した新規ストローマ因子mKirreの生理機能解析を進めている。抗体による免疫染色およびin situハイブリダイゼーションの結果はmKirreが長管骨骨端軟骨付近の骨梁の表面のオステオブラストの一部に発現していることを示した。この場所は造血ニッチと一致する部分であり、mKirreの造血幹細胞への作用を示唆した。 H18年度はmKirre遺伝子のin vivo機能解析を行うため、mKirreノックアウトマウスの作製を行った。mKtrrecDNAをプローブにしてmKirre遺伝子を含むBACクローンを単離、BACクローンおよびマウス遺伝子データベースをもとに、mKirre遺伝子座の制限酵素マップを作成した。これをもとに、mKirre遺伝子の第1エクソンをLacZ遺伝子とneomycinカセットで置換するようにターゲティングベクターをデザインした。続いてこのターゲティングベクターをC57BL/6由来ES細胞にエレクトロポレーションで導入、neomycinによりセレクションし相同組み替え体をスクリーニングした。約400クローンのneomycin耐性クローンから、サザンプロットによりmKirre遺伝子座がターゲティングされている2クローンをえた。染色体解析からこれらのクローンはいずれも正常核型であり、キメラマウス作成のためblastcystインジェクションに使用した。計4回のインジェクションの結果、高キメラ率のキメラマウス数匹を得、これらをC57BL/6と交配しヘテロマウス作成を行っている。現在のところ出生したマウスは全てC57BL/6由来であり、ES細胞のgermline transmissionは認めていない。この結果は、mKirre遺伝子座の片方が破壊されると精子形成あるいは受精後の発生が障害される可能性も示唆しており、現在引き続きキメラマウスの交配を行うとともに、これらの異常が実際に見られるかどうか検討を開始したところである。
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