研究概要 |
本研究の目的は精子幹細胞を用いた遺伝子トラップ法を開発し、精子幹細胞に発現する遺伝子の携帯的な機能同定法を確立することである。我々のグループが2003年に報告した精子幹細胞の長期培養系(Germline Stem;GS細胞培養系)を用いてレトロウイルスの遺伝子トラップベクターROSA beta-geoにより遺伝子トラップを行った。このベクターは遺伝子発現パターンを個体レベルで解析するためのLacZ配列と、遺伝子導入された細胞の薬剤選択を行うためのneomycin配列を持っている。 遺伝子を導入したGS細胞はネオマイシン処理による薬剤耐性コロニーの選択を行い、96穴にクローニングを行ったのち、10cmプレートのスケールまで増幅を行った。このように増幅された99個のクローンのRNAを採取し、RACE法によりトラップ遺伝子の同定を行った。RACE法により88個のクローンで挿入部位が同定された。挿入部位は染色体でランダムに分布し、95%が遺伝子の上流、特に1stイントロンに優位に(63%)挿入されていた。ATP synthetaseやoccludinなど膜蛋白や、pyruvate kinaseなどの代謝関連酵素、methylguanine DNA methyltransferaseやRAD18homologueなどのDNA repair enzyme、ergやzinc finger protein 111などのtranscription factor, Rho GTPase activating progein gene 8やkinesin-related protein KIFC5aなどの細胞骨格分子など、多岐にわたる遺伝子に挿入された。 うち7個のクローンはGS細胞を不妊マウスの精巣に移植し、交配により子孫を作成した。子孫にはGS細胞と同様の挿入が伝達されていることが確認された。ホモのノックアウト個体を作成するため、ヘテロ子孫同士を交配させ、現在生まれてきた仔について解析中である。
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