マウス胚では、受精後3.5日目に胚盤胞に至る。胚盤胞腔の形成は32細胞期前後にみられるようになり、胚盤胞ではTrophectoderm(TE細胞)と内部細胞塊(ICM)の細胞の2種類の細胞がみられる。本研究では、タイムラプス顕微鏡を用いた連続的観察と細胞系譜解析によりTE細胞の分化の機構を探り、それを通してICMの細胞の未分化性の維持機構を考察することを目標とした。 胚の全ての核がヒストン融合GFPで標識されるトランスジェニックマウスの2細胞期胚を胚盤胞の時期まで培養し、タイムラプス撮影を行った。それぞれの核の位置を時間ごとにトレースし、細胞の分裂の様式、細胞系譜を比較的容易に読み出す系が開発できた。 ICMのない領域で胞胚腔に面したmTE細胞(Mural Trophectoderm細胞)への系譜を解析した。66胚について解析した結果、全ての胚において2細胞期の2つの割球のいずれもが、mTEに寄与した。4細胞期の割球についても将来の分化運命が分離されることは少なかった。4細胞期以降の分裂の順と将来の運命についても考察したが、分裂の順と運命の関係はみられなかった。胚盤胞腔が2カ所以上から広がる胚がいることから、TE細胞への分化は第一段階として自律的に個々の細胞で起きると考えられる。また胚盤胞腔が広がって一つの固まりになる際に細胞の配置換えを必要としていないことから、分化制御の第二段階として、細胞間相互作用によりTE細胞としての性質をもつようになると示唆された。 今後分裂のパターンや、細胞の配置などと分化運命の関係について調べることを進める。さらに、Cdx2などの分化マーカーの出現との関連についても解析を進める予定である。
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