研究課題/領域番号 |
17045024
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
瀧原 義宏 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (60226967)
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研究分担者 |
大坪 素秋 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助手 (10211799)
安永 晋一郎 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助手 (50336111)
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キーワード | ポリコーム遺伝子群 / 幹細胞 / 幹細胞性 / 分子基盤 / 遺伝子改変マウス / レトロウイルスベクター |
研究概要 |
ポリコーム遺伝子群(PcG)の幹細胞制御における役割を遺伝子改変マウスを解析することによって世界に先駆けて明らかにしてきた。その後、PcGによる幹細胞制御はES細胞から造血幹細胞、神経幹細胞、神経堤細胞、そして白血病幹細胞にまで広く幹細胞全般に及ぶことが解ってきたが、その分子基盤については未だ充分に明らかにされていない。PcGがHox遺伝子群の転写制御を担っていることはよく知られているが、幹細胞制御の分子基盤を構成している可能性については否定的である。PcGはp16CKIやp19ARFをコードするink4a遺伝子座の転写を抑制することによって幹細胞の活性を維持している可能性が他の研究室から報告されている。このことはPcGの欠損による幹細胞の活性低下はink4a遺伝子座の欠損によって有意に相補されることからも裏付けられる。しかし、ink4a遺伝子座が欠損した幹細胞においてもPcGの高発現によって幹細胞活性の誘導が観察される。また、ink4a遺伝子座を欠損しても造血幹細胞の明らかな活性の増大はない。さらに、ChIPアッセイではink4a遺伝子座にPcGを検出することには成功しておらず、PcGによるink4a遺伝子座の転写制御が直接的かどうかは明らかではない。これらのことから、ink4a遺伝子座の転写制御だけでは幹細胞の活性制御機構を理解するには充分ではなく、PcGによる幹細胞活性を支持する分子基盤には新たな側面があることが予測される。 本研究では、PcG複合体1の構成因子の一つであるrae28の欠損マウスにおいて幹細胞機能が欠損していること、そして分子レベルではPcG複合体1がともにDNA複製ライセンス化因子Cdt 1の阻害因子Gemininと結合することを見つけるとともに、さらにPcG複合体1はその構成因子の一つであるScmh1を介してGemininをユビキチン化することによってタンパク質の安定性を制御していることを示す解析結果を得た。このような分子機構が造血幹細胞だけでなく、幹細胞全般に渡って幹細胞性を支持していることが予測され、今後の幹細胞研究に重要な情報を提供するが期待される。
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