研究課題
我々は、ES細胞から膵幹細胞を分化誘導するためには正常発生と同様な過程を経ることが重要であると考え、膵幹細胞マーカーであるpdx1の発現を指標にしている。そのためには、分化誘導に必要なシグナル源の探索から始めた。様々な検討の結果、膵臓原基の代替となる誘導活性の高い培養細胞株を支持細胞として用いる方法を確立した。この方法では、外胚葉および中胚葉の細胞は分化誘導されずに、内胚葉の細胞が特異的に効率よく誘導されている。更にpdx-1/GFPマウスからES細胞を樹立し、上記の分化誘導法と組み合わせることにより、各種因子が膵前駆細胞への分化に与える影響について経時的かつ簡便に観察することが可能となった。上述の分化誘導法により、始めて大量にPdx1/GFP陽性細胞をES細胞から得ることが可能になった。セルソーターを用いて、GFP陽性細胞の蛍光強度に基づき純化することができ、ES細胞由来の膵前駆細胞の遺伝子発現網羅的解析を行なった。これは国内外でも初めての成功例である(吉田ら、論文準備中)。得られたpdx-1/GFP陽性細胞で発現する遺伝子について、既に報告されているマウス胎生7.5日目の内胚葉層及び胎生9.5日目の膵前駆細胞の遺伝子発現プロファイル(Gu et al.2004)と比較した。今回得られた、ES細胞由来の膵前駆細胞の遺伝子プロファイルは、マウス胎生7.5日目の内胚葉の遺伝子プロファイルとよく似ているものであり、ES細胞から膵への分化誘導は正常胚発生を再現していることが強く示唆された。ES細胞由来の分化細胞と初期胚発生の正常細胞とで共通して発現している遺伝子には、消化器以外の体性幹細胞でも共通して発現している遺伝子が含まれている(吉田ら論文準備中)。したがって、ES細胞由来のPdx1陽性細胞は、幹細胞の性質を一部持つと予想される。
すべて 2005
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