研究概要 |
平成17年度の研究において、M-CSF依存性の骨髄由来前駆細胞、およびマクロファージ細胞株RAW264.7を用いて非対称細胞分裂像の出現頻度を最大にするようなM-CSFとRANKLの濃度を探した。次に、免疫蛍光染色法により、転写因子NFATc1の発現にも非対称性分裂像が認められることを観察した。この結果は、単にTRAP染色だけでなく、破骨細胞分化の転写因子カスケードの活性化が細胞分裂を伴って非対称に起こる可能性を示している。さらに、タイムラプス法により経時的に細胞分裂を捉え、分裂直後の2連の細胞に非対称性が認められるかどうかを、TRAP染色を行うことによって解析した。その結果、細胞分裂後に非対称なTRAP染色性を示す例が観察された。 次に、非対称細胞分裂をリアルタイムで観測するために、緑色蛍光蛋白(GFP)を発現するふたつの実験系を構築した。ひとつは、転写因子c-Fosの遺伝子座にGFPをノックインしたマウスであり、もうひとつは破骨細胞特異的にCreを発現するマウスにGFPレポータマウスを掛け合わせたもので、どちらの実験系においても破骨細胞分化に伴いGFPが発現することが予測される。これらのマウスから調整した前駆細胞を分化させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いたタイムラプス法による解析を行った。 最後に、c-Fosを欠失すると破骨細胞分化が阻止されるだけでなく、炎症性サイトカインの産生亢進が認められた(Ray et al.,in press)。このことは、c-Fosが破骨細胞分化誘導に関わる遺伝子群を活性化すると同時に、マクロファージ遺伝子群を抑制すること、すなわちc-Fosが細胞系譜分岐点以降に遺伝子発現のコントラストを作り出していることを示唆している。平成18年度には、c-Fosの除去により破骨細胞分化の可塑性が得られるかどうかという点を目指して解析を進めたい。
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