研究課題
18年度は、主要な細胞外マトリックス糖タンパク質であるフィブロネクチン(FN)の肝再生初期過程での変化に注目し、糖鎖と活性の変化をビトロネクチン(VN)と比較した。部分肝切除手術(H)またはコントロールとしてのシャム手術(S)を行い、術後24時間のラット及び非手術(N)ラットから血漿を採取し、FNを精製した。代表的なFNリセプターであるインチグリンα_5β_1を持つハムスター腎由来線維芽細胞(BHK)とラット肝星細胞(RSC)は、H-、S-、またはN-FNを基質とした時、いずれも濃度依存的な細胞接着伸展が観測され、BHKではどのFN上でも同等に伸展したのに対して、RSCではH-、及びS-FNでN-FNの1.3倍に増加した。酵素によって各FNからN型糖鎖を遊離し、糖アルコールとしてLC/MS解析した結果、どのFNでも共通にジシアロ二本鎖複合型糖鎖(BiNA(2))が最も多く含まれ、1〜3個のシアル酸が結合し、O-アセチル化修飾に差のある合計16種類の糖鎖構造が決定された。トリシアロ三本鎖複合型糖鎖(TriNA(3))に関しては、H-FNでは結合位置の差による異性体が検出された。また、シアル酸のO-アセチル化の割合はN-FNに比べてH-FNで減少し、逆にフコシル化糖鎖の割合は増加していた。糖組成から、H-FNではL-フコースがS-FNの約1.6倍に増加しており、フコシル化の増加が支持された。プロテアーゼフラグメント化後のレクチン反応性から、H-FNでの術後のフコース付加や分岐構造の増加が示唆され、また二次元電気泳動により、各フラグメントの糖鎖修飾による等電点の多様性もH-FNで増加することが示された。VNでは術後24時間の肝再生初期にRSC細胞接着伸展活性が半減し、アポトーシス誘導が示唆された。さらにVNでは混成型およびオリゴシアリル構造など、FNでは存在しない糖鎖構造が示された。同じ肝実質細胞が産生するタンパク質で、糖鎖と活性変化の相違が観測され、各糖タンパク質の生物機能の差につながると考えられた。
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