研究概要 |
ポリシアル酸はシアル酸がポリマー化したユニークな構造であり、非常に重要な機能性糖鎖と考えられている。一方、シアル酸の重合度が2から7のオリゴシアル酸構造の存在は糖タンパク質においてその存在や機能はほとんど知られていなかった。近年我々はシアル酸重合体の微量検出法を開発し、その方法を用いて成体脳型NCAM、CD166、シナプトフィジン、カドヘリン等がジシアル酸含有糖タンパク質であることを示した。 本研究においてCD166は神経系と血球系に共通に存在する糖タンパク質であること、マウスT細胞において、ジシアル酸含有糖タンパク質とジシアル酸含有糖脂質(b,c-シリーズガングリオシド)が共局在し、それは特にラフト上に集積することを明らかにした。また、T細胞の活性化においてジシアル酸構造が抗CD3抗体や抗CD3抗体と抗CD4抗体の共刺激により発現量が増加すること、また同様の活性化刺激によりST8SiaI, IV, VIのmRNAの発現増加が明らかになった。さらにジシアル酸に対する抗体により細胞表面上のジシアル酸を架橋しただけではT細胞の活性化を引き起こすことはできないが、抗CD3抗体や抗CD3抗体と抗CD4抗体と共に培養を行うと、T細胞の増殖をそれぞれの抗体単独の時よりも2割程度増加させることが明らかになり、ジシアル酸構造が共刺激的な反応を媒介することを明らかにした。 ポリシアル酸については、ミクログリア細胞にポリシアル酸構造が存在するか否かをマウス脳の初代培養細胞およびRa2ミクログリア細胞株を用い、ポリシアル酸に特異的な抗体(重合度5以上)および、エンドシアリダーゼ(重合度6以上)を用いて、細胞免疫染色法および、ウエスタンブロッティング法により解析した。またあわせて、血中に存在するマクロファージ系の細胞であるRAWを用いてもポリシアル酸の存在を検討した。その結果、ミクログリア細胞においてのみポリシアル酸が存在するということが明らかになった。
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