研究概要 |
1.Bral2/Haln4ノックアウトマウスの神経周囲網マトリックス分子発現への影響:まず、Northern blottingと免疫組織学的方法でBral2/Hapln4遺伝子発現がないことを確認した。我々は先に発表した論文(Bekku et al.,Mol.Cell.Neurosci.,2003)で、Bral2/Hapln4の神経周囲網(PNN)へのタンパク質局在を報告し、ヒアルロン酸結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるbrevicanとの共局在を示した。Bral2/Hapln4ノックアウトマウスでは抗brevican抗体の神経核でのPNN様の染色性が大きく低下し、diffuseになっていることが確認できた。しかしながら、reticulotegmental nucleus of the pons (RtTg)ではBral2欠損マウスでbrevicanのPNN様の発現パターンが一部のみdiffuseになっていたことから、RtTgにおいてはBral2以外のLPが補償している可能性も考えられる。 2.PNN形成におけるBral2/Haln4の役割:我々はBral2/Hapln4ノックアウトマウスのBral2/Hapln4遺伝子のエキソンにtauLacZ遺伝子をノックインしている。すなわち、+/-マウスではBral2/Hapln4遺伝子の転写活性に従い、Bral2発現神経軸索をX-gal染色でき、同時にBral2タンパク質は免疫染色できる。脳の神経回路の中でも単純な回路を持つ小脳に焦点を当て発現細胞とタンパク質局在の関係についての情報収集を行った。X-galの染色はtauの発現に依存しており、本来軸索に染まるはずであるが、プルキンエ細胞においては樹状突起もX-galで染色されてしまい、関係を可視化することはできなかった。これは、もともとプルキンエ細胞では樹状突起でもtauが発現しているためであると考えられる。しかしながら、小脳核においてBral2タンパクのみの発現が見られる細胞と、Bral2mRNAとBral2タンパクの両方の発現が見られる神経細胞が存在していた。これはBral2発現神経細胞とBral2タンパクの局在が必ずしも一致していないことを示す。このことから、Bral2mRNAの発現部位とタンパク発現部位が異なっていることがわかり、Bral2mRNA発現細胞の終末でタンパクが発現することが更に強く示唆された。 またBral2/Hapln4欠損マウスにおいてはbrevicanのPNN様の発現パターンがdiffuseになるという結果を得ている。Bral2/Hapln4は一部の神経回路の神経核に特異的に発現している。Bral2の欠損により、brevican以外のプロテオグリカンのPNNの局在に影響する結果も観察できたが、その度合いは神経核ごとにより異なる。 Bral2の欠損により各々の会合体破壊がおこることから、ランビエ絞輪周囲あるいは神経周囲膜の細胞外微小環境において特異的会合体形成に必須であることがわかった。
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