研究概要 |
本研究では哺乳類ガレクチンファミリーの役割、特にタンデムリピート型ガレクチン(galectin-8、-9など)の免疫系細胞の活性化と糖鎖認識を介した情報伝達機構の解析を行っている。これまで各種培養細胞を使って、galectin-9がT細胞(Jurkat,Molt-4)のアポトーシスと細胞接着の両応答を惹起し、galectin-8はT細胞、B細胞(Daudi, Namalwa)、単球(THP-1)などの細胞接着を誘導することを見出した。さらにJurkat T細胞をモデルに、galectin-8の細胞接着誘導に関与する候補分子の精製を試み、CD45やIntegrin-α4を同定できた。今回、細胞接着について、糖鎖認識特異性が異なる植物レクチンとも比較して、ConA,WGA,LCA,RCA-120などがJurkatの接着を誘導し、同時に各々がintegrin-α4と結合することが分かった。さらに、galectin-8による細胞接着がintegrin-α4とintegrin-β1に対する抗体で抑制されたことから、Jurkat細胞接着誘導にはintegrin-α4β1が主に関与しているものと考えられた。インテグリンはαおよびβサブユニットから構成され、細胞接着(機能発現)にはβサブユニットから繋がる細胞内情報伝達系の活性化が予想されたことから、細胞内情報伝達分子の解析も行った。インテグリンを介した細胞接着にはPyk2のようなFAKやその下流に位置するERK1/2のキナーぜ群の活性化が知られているが、galectin-8によってこれらのリン酸化(活性化)が惹起され、阻害剤でリン酸化と接着が同時に抑制された。従って、galectin-8による細胞接着誘導はインテグリンとの結合に始まる細胞内リン酸化カスケードの活性化とアクチンフィラメントの形成にあると考えられる。
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