研究概要 |
化学的手法と生化学的手法を組み合わせてT細胞表層に存在する共刺激受容タンパク質AILIM/ICOS上の糖鎖構造の推定およびその糖鎖の機能解明を検討した。まず、様々な生化学的なアッセイに利用するため、AILIM/ICOSをもつIgFcキメラを調製した。そして、その表層の糖鎖をGlycopeptidase-Fを用いて除去した。AILIM/ICOS-IgFcキメラの糖鎖全てを加水分解反応により除去できる条件を検討し、全ての糖鎖を除去し電気泳動により確認した。そしてこのAILIM/ICOSのレセプターである抗原提示細胞上のB7hとの結合親和力をELISAにより定量したところ、糖鎖除去に伴いその親和力が約半分に低下することを明らかにした。そこで、AILIM/ICOS上のどの糖鎖が機能発現に関与しているかを調べるために、AILIM上にある3本の糖鎖が結合しているアスパラギン残基(23,89,110)をそれぞれグルタミン残基に変異させたミュータントを作製した。そして、同様にB7hとの結合親和力を調べたところ、89番目に結合したN型糖鎖を失うと、CD86への結合親和力が著しく低下することを明らかにした。そして、この糖鎖構造についても調べた。89番目のみ糖鎖が結合したAILIM/ICOS-IgFcキメラを作製後、そしてGlycopeptidase-Fを用いてFc領域の糖鎖も含めキメラ分子より切り出した。そして、糖鎖をキャピラリ電気泳動、質量分析、レクチン結合解析をおこない、89番目の糖鎖は、シアル酸を1つ有する2分岐複合型糖鎖であることを明らかにした。そこで、これら糖鎖を持つAILIM/ICOSの糖ペプチド誘導体を調製し、糖鎖構造とCD86への結合親和力の関係を調べることにした。既に鶏卵より単一構造の複合型2分岐糖鎖ペプチドを調製する方法を確立しているので、これを原料に多様な構造の糖鎖を調製し、ペプチド鎖に導入する検討を開始した。そして、糖鎖のペプチド鎖からの除去反応において従来無水ヒドラジンを使用する必要があるとされていたこの反応を安全な水和ヒドラジンを用いて還元末端が遊離になった糖鎖を得る方法を確立することに成功した。そしてこの糖鎖還元末端をハロアセトアミド骨格に変換するルートを確立した。また、AILIM/ICOSの活性発現部位近傍の50残基程度のペプチド鎖の合成も終了したので、糖鎖を付加し糖鎖構造とAILIM/ICOSの機能発現の関係を明らかにするアッセイを開始する。また、共同研究者である辻により、Jarkat細胞の上のAILIM/ICOSに抗AILIM/ICOSを反応させるとその核が成人T細胞白血病様の核変形を起こすことが明らかにされた。現在、この機構とAILIM/ICOS上の糖鎖の関係も調べている。
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