研究概要 |
Notchシグナルは発生、細胞分化のさまざまな局面で重要な役割を担っており、その機能不全はまたT細胞性白血病やCADASIL(頭痛を主症状とする皮質下梗塞と白質脳症を伴った脳動脈疾患)をはじめとする種々の疾患の原因であることが知られており、現在幅広い生命医学分野から高い注目を集めている。Notchの細胞外ドメインはO-フコース型糖鎖による修飾をうけており、この糖鎖修飾の第1段階を触媒するO-フコース転移酵素(O-Fut1)の欠損マウスはNotchと同様に胎生致死となる。研究代表者らはこの欠損マウスから樹立したES細胞を用いて、O-フコース型糖鎖の欠損によりリガンド結合能が失われることを示した。一方で岡島らはDrosophilaの細胞を用い、O-フコース型糖鎖がNotchの生合成輸送に関与することを最近発表した。そこで本年度はO-Fut1欠損ES細胞の細胞表面におけるNotchの発現についてさらに詳細に検討した。Notch1に関しては2種類、Notch2,3,4に関してはそれぞれ1種類の合計5種類の市販の抗体を用いて、FACSで解析したところ、いずれも野生型と同様に細胞表面における発現が認められた。さらに、fucose代謝欠損細胞株Lec13をフコースの存在あるいは非存在化で培養して、同様に検討したところ、フコース欠損下でもNotchの細胞表面発現はほとんど正常であった。なお、フコース欠損下ではリガンド結合は顕著に低下した。現在、細胞内におけるNotchの蓄積の可能性について検討を進めているところである。
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