研究課題
本研究課題はカルシウムシグナルと筋収縮におけるヘパラン硫酸プロテオグリカン、パールカンの関与を明らかにすることを目的としている。筋、神経等興奮性細胞における初期のカルシウム濃度の上昇はマイクロドメインから起こり、強い刺激を受けると局所的なカルシウム濃度変化が融合して細胞質の区画全体に及ぶ広域的なカルシウム濃度上昇を引き起こす。そこには何らかの細胞外マトリックスによるシグナル局在化のメカニズムが働いている可能性がある。我々は、その初期過程で、ヘパラン硫酸プロテオグリカンが細胞膜でのシグナル局在化に関わり、カルシウム濃度変化の誘導を制御していると考えた。これまでにパールカン欠損骨格筋の易収縮性の発症機構を検討し、神経終末からのアセチルコリンの放出亢進、神経筋接合部でのアセチルコリンエステレース欠損が明らかになりつつある。今年度は、マウス大動脈平滑筋を用いた薬理学的検討を行い、パールカン欠損大動脈では野生型(WT)大動脈に比べ、フェニレフリンによる濃度依存的な血管収縮が有意に亢進することが解った。カルシウム流入を介する高K刺激収縮は正常であったことより、アクトミオシン系等の収縮機構に異常はないと考えられた。血管平滑筋においては、カルシウム遊離機構(IP3-induced Carelease)あるいはカルシウム感受性(Rho/Rho-kinase系)亢進の存在が疑われた。一方、AChによる内皮依存性一酸化窒素(NO)遊離を介する血管弛緩は、パールカン欠損血管ではWTに比べ有意に減少していた。SNPによる弛緩が正常であったことより、内皮由来血管弛緩因子であるNOに対する血管平滑筋側での感受性に異常はなく、内皮細胞におけるムスカリン受容体の感受性の低下、IP3-induced Careleaseの減少、内皮型NO合成酵素(NOS)の発現低下などの可能性がその原因として考えられた。骨格筋における収縮異常との関連性も含め興味深い知見と考えられ、次年度にカルシウム動態などの詳細な検討が必要と考えられた。
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