【目的】免疫監視機構における免疫バランス制御の意義、メカニズムを解明し人為的免疫バランス制御法の疾病治療への応用を計る。 【結果】(1)TLR9のリガンドであるCpGと癌抗原タンパクを含有したリポソームを担癌動物に投与することによって、癌抗原特異的なテトラマー陽性CTLが誘導され約50%のマウスにおいては癌の完全退縮が認められた。この治療においてはCD4^+Thは不必要であり、タイプ1IFNα/βが直接メモリータイプCD8^+CTLに作用して癌特異的CTLが誘導されることも明確にされた。(2)免疫バランス制御が癌特異的Th1細胞によっても可能であることが示された。しかし、Th1細胞をIL-4で前処理してmigrationに必要な接着分子の発現を阻止することによって、Th1細胞はIFN-γを産生できるにもかかわらず抗腫瘍活性は失った。この概念をtrafficking modulationと名付け、現在さらにその機構と応用性を検討している。(3)Th2細胞にはステロイド合成や分解に必須な酵素群が発現しており、免疫系とストロマ細胞の共同作用によってコレステロールからプレグレノロンやプロジェステロンが合成されることが証明された。このようなステロイドをイムノステロイドと名付けて、現在その免疫バランス制御における意義を追求している。 【考察】CpGの癌治療における免疫制御機構がほぼ解決され、臨床応用を開始するために必要な免疫理論が明確にされたと考える。しかし、CpG免疫制御法に対する感受性には遺伝子支配あるのでその機構を明確にする必要性がある。trafficking modulationとイムノステロイドの2つの新しい概念については今後さらにその免疫バランス制御における意義を追幸する必要性がある。
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