研究概要 |
これまでにFcα/μRはFDCとB細胞、特に境界領域B細胞(marginal zone B cells, MZB細胞)に高発現すること、Fcα/μR欠損マウスにおいてはT細胞非依存性抗原(TI抗原)に対する胚中心形成が亢進していることを明らかにした。平成18年度はFcα/μRがTI抗原に対する液性免疫応答を負に制御するメカニズム、およびTI抗原による胚中心形成の生理的意義を明らかにすることを目的とした。 結果 TNP-Ficol1をFcα/μR欠損マウスおよび野生型マウスに経静脈的に投与し、抗TNP抗体を用いた染色を行って検討した。TNP-Ficol1はまず投与3時間後にMZB細胞に選択的に捕捉され、その後時間と共に消失したが、Fcα/μR欠損MZB細胞上の抗原捕捉は遷延し、野生型MZB細胞に比して優位に亢進していた。抗原は投与24時間後にはFDC上へ到達していたが、FDC上の抗原捕捉もFcα/μR欠損マウスにおいて亢進していた。さらに脾臓におけるCXCL13の発現を定量的RT-PCRにて検討したところ、野生型マウスではTI抗原免疫に伴ってCXCL13の発現が増加したが、Fcα/μR欠損マウスではその発現増加が有意に亢進していた。次に、Fcα/μR欠損マウスおよび野生型マウスをNP-Ficol1で免疫し、12週後に追加免疫を行い、初回免疫および追加免疫1週後の血清を用いてNP特異的抗体の抗原親和性を検討した。野生型マウスでは追加免疫後も抗原親和性は不変だったが、Fcα/μR欠損マウスではNP特異的IgG3の抗原親和性が追加免疫後に有意に亢進していた。またFcα/μR欠損マウスではNP特異的B細胞レセプターの体細胞遺伝子変異も亢進していた。 考察 MZB細胞およびFDC上に発現するFcα/μはTI抗原の捕捉、CXCL13産生を負に制御しており、Fcα/μR欠損マウスではその抑制が消失するためにTI抗原に対する胚中心形成が亢進することが示唆された。また、Fcα/μR欠損マウスではTI抗原に対する胚中心形成充進の結果、体細胞遺伝子変異を伴うIgG3抗体の親和性成熟が誘導されることが示唆された
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