【目的】 生体内のTh1/Th2細胞のバランス制御は、外界から侵入した異物に対して適切な免疫反応をすみやかに惹起する重要な免疫監視システムのひとつである。DNAM-1は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着分子である。申請者らは、これまでにT細胞上のDNAM-1が、LFA-1と複合体を形成し(Immunity 1999)、Th1分化誘導シグナルの伝達に関与することを明らかにした(J.Exp.Med. 2003)。さらに、申請者は先頃DNAM-1が樹状細胞のサブセットのうちCD8α^+樹状細胞に特異的に発現していることを観察した。 本研究では、CD8α^+樹状細胞上のDNAM-1がヘルパーT細胞の分化と活性化にどのように関与するかをin vivo、in vitroの両側面から解析した。 【結果】 (1)DNAM-1による樹状細胞の活性化 CD8α^+樹状細胞上のDNAM-1を刺激することにより、costimulatory moleculeの発現が上昇し、抗原提示能が亢進した。また、DNAM-1で刺激したCD8α^+樹状細胞にて抗原提示されたCD4^+ナイーブT細胞ではTh1細胞への分化が促進されていた。 (2)DNAM-1の生体内Th1/Th2バランスにおける役割 (A)DNAM-1シグナルによる腫瘍拒絶 腫瘍にDNAM-1リガンドを強制発現すると、腫瘍抗原特異的なCTLが誘導され、腫瘍の拒絶が促進された(Blood. 107:1491-1496. 2006)。 (B)DNAM-1遺伝子欠損マウスの作製 BACを用いたシステムにより、DNAM-1遺伝子欠損マウスの作製を試み、ヘテロ個体を得た。 【考察】 DNAM-1はT細胞上においてTh1分化を促進するばかりではなく、樹状細胞を活性化し、2次的にTh1分化を促進することが明らかになった。また、生体内では、DNAM-1とDNAM-1リガンドの結合が腫瘍特異的CTLを誘導し、腫瘍拒絶を促進することを明らかにした。CTLはTh1細胞によって活性化されることが知られているが、本実験系においてもDNAM-1のシグナルにより生体内のTh1反応が促進していた可能性が考えられる。 【平成18年度の目標】 本年度DNAM-1遺伝子欠損マウスのヘテロ個体を得た。平成18年度では、早急にホモ個体を得、DNAM-1の生体内における機能を特にTh1分化に着目して解析する予定である。
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