研究課題
免疫監視の最前線の場として粘膜関連リンパ組織(MALT)が存在している。近年、これら消化管や呼吸器粘膜に分布する多種類のMALTには、それぞれの異なったサイトカインの制御によって胎生後期に形成が完了するものと、出生後早期に形成が開始されるものがある。本研究では異なったMALTについて、その形成機構のユニーク性を解明し、粘膜における第一線のバリアとしての粘膜免疫監視・防御を担う分泌型IgA抗体に代表される獲得免疫機構・制御システムの詳細を明らかにする。本年度、我々は胎生期にLTβR-IgとTNFR55-Igの両方で処理するとパイエル板・腸間膜リンパ節は欠損しているが、大腸における腸管孤立リンパ小節(ILF)形成が増加することを明らかにした。さらにこのIg処理マウスでは大腸のIgA産生細胞の増加を認めた。これらの結果から、パイエル板や腸管膜リンパ節だけでなくILFも腸管における分泌型IgA産生メカニズムの重要な誘導組織であることが明らかになった。平成18年度はMALTを中心としたIgA産生メカニズムのさらなる解明を目指す。MALTや腸管固有層には数多くの樹状細胞(DC)が存在する。免疫制御における重要性が指摘されているDCの腸管免疫システムにおける役割は依然不明な点が多い。そこで、抗原特異的IgA産生B細胞の誘導も含めて、DCがどのように粘膜免疫誘導・制御に関与しているか検討する。リンパ組織形成関連ケモカイン(CXCL13,CCL19,CCL21)はパイエル板やリンパ節の組織形成には必須であることが知られている。我々はNALT形成誘導細胞(NALTi)がCXCL13,CCL19およびCCL21に非依存的にNALT原基に遊走し、NALT組織形成誘導を開始することを明らかにした。また、RORγは胎生肝臓の前駆細胞からのPPiの分化には必須であるもののNALTiの分化には必要ないことも明らかにした。以上の結果からNALTiの分化および原基への遊走機構などパイエル板やリンパ節とは全く異なるユニークなリンパ組織形成メカニズムの存在が示唆された。平成18年度はこれらの結果をふまえ、NALTiによるNALT組織形成誘導メカニズムの解明に取り組む。遺伝子および蛋白質レベルでNALTiに特異的に発現している分子群を同定し、これらの分子の組織形成誘導への関与を個体レベルで検討する。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (11件)
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