研究課題
B細胞が胎児肝臓や成体骨髄において分化する過程で、免疫グロブリン遺伝子の再構成がおこり、その結果形成されるさまざまなH鎖とL鎖の組み合わせにより、膨大なB細胞レセプター(BCR)レパートリーが形作られる。しかし、V-(D)-Jセグメントのアットランダムな組み合わせによって作り出されるH鎖とL鎖のそれぞれに関して、BCRを形成する以前に、どのようにして品質管理がなされているかに関してはよくわかっていない。昨年度の研究で、フローサイトメトリーを用いた新規解析法により、マウス骨髄ならびに胎児肝において、プレB細胞レセプター(preBCR)形成能のあるμH鎖を発現しているプレB細胞とpreBCR形成能のないμH鎖を発現しているプレB細胞とを識別・単離する方法を確立した。そこでさらに、preBCR形成能のあるμH鎖を詳細に解析した結果、各μH鎖と代替L鎖の結合能はall-or-noneではなく、多種多様でかなりの幅があることが判明した。さらに、両者の結合能が高いほど、プレB細胞上のpreBCRの発現レベルが高く、かつpreBCRを介するシグナルが強いことがわかった。preBCRの発現レベルが高いほど、プレB細胞の増殖ならびに分化が強く誘導され、preBCRの高いものと低いものでは、B細胞への分化能が50倍以上も違うことがわかった。さらに、代替L鎖との結合能の高いμH鎖ほど、κL鎖との結合能も高いことが強く示唆された。すなわち、BCRの形成以前に、preBCRの形成時点でμH鎖の品質をチェックし、将来的にL鎖と効率よく結合できるような高品質なμH鎖を産生したプレB細胞をpreBCRのシグナルを介して選択的に増殖・分化させる巧妙な仕組みが存在することが明らかとなった。
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