炎症性腸疾患において、エフェクター/メモリー細胞は常にリニューアルされて異常免疫が維持されているのか、あるいは、発症時に一度完成されたメモリー細胞が生涯に渡り生在し、エフェクター細胞を供給しているのか、さらには腸内細菌に常にさらされている状況下ではメモリー細胞は存在せず、常にエフェクター細胞の供給がなされているのかを明らかにすることを目的とした。(1)マウスCD4+CD45RBhigh移入慢性大腸炎粘膜内リンパ球はそのほとんどがCD4+CD44highCD62L-のEffector(T_E)またはEffector-memory(T_<EM>)フェノタイプ細胞であった。(2)しかし、本細胞はIL-7Rαを高発現し、IL-7^<+/+> x Rag-1^<-/->マウスへの移入とは異なり、IL-7^<-/-> x Rag-1^<-/->マウスへの移入では腸炎を発症せず、腸内細菌に常に暴露さている状況下でも腸炎惹起性CD4+メモリー細胞の存在が強く示唆された。(3)本細胞のSCIDマウスへの移入を繰り返し行ったところ、4世代以降徐々に腸炎発症までの期間が有意に延長することを見出し、さらにはTCR Vβ解析の結果でも一部のレパトアの脱落を認めた。 以上のことから、SPFという腸内細菌の存在する環境下でも慢性大腸炎マウスにはIL-7依存性に腸炎惹起性CD4+細胞は存在し、慢性大腸炎持続に寄与することが推定された。さらには、腸炎惹起性CD4+細胞にも老化現象を認めることが示唆された。以上のことは、炎症性腸疾患も含め、広く自己免疫疾患の永続性、さらには高齢化に伴う自己免疫疾患の活動性の現象といった特徴を疾患特異的なメモリーT細胞が寄与することが推定され、新規治療法の標的としてのメモリーT細胞の重要性が考えられた。
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