[目的]ペア型レセプター群は相同性の高いリガンド結合部位である細胞外ドメインを持ちながら、活性化シグナルを伝達できる型と抑制シグナルを伝達する型をペアで有するレセプター群のことで、両型のレセプターにより正負シグナルのバランスを巧妙に取ることにより、自己と非自己を識別することを可能としている。ペア型レセプターにはKIR、LILR(別名ILT/CD85)などが存在する。本研究では、最近、大阪大学の荒瀬らによりリガンドが同定されたペア型レセプターPILR (Paired Ig-like type 2 receptor)を中心に解析を進めることとした。PILRは広く白血球に発現が見られるが、抑制型PILRαと活性型PILRβで発現量に差があり、また、リガンド側のPILR-LがCD4陽性T細胞の活性化により発現が誘導されるなど、多様な免疫応答に関与することが死されている。そこで多様な免疫系の制御に関わるPILRとリガンドPILR-Lとの分子認識機構の構造基盤について相互作用解析と立体構造解析により明らかにすることを目的とした。 [結果と考察]PILRは抑制型PILRαと活性型PILRβがある。本年度はPILRαレセプターについて大腸菌により封入体を得て、巻き戻すことに成功した。競争阻害実験によりPILR-L1を発現する細胞に対して巻き戻したPILRαが特異的に結合を示すことがわかった。また、^<15>Nラベル体蛋白質を作製し、NMR測定を行った結果、良好なHSQCスペクトルを示すことがわかった。しかし、高濃度では凝集が見られ、溶液条件などの検討がさらに必要であることが明らかとなった。さらに、PILRαの結晶化については、同様にサンプルの濃縮に問題が残るものの、微結晶が得られる条件を得た。関連論文として、同じペア型レセプターであるLILR分子について原著論文4報を報告した。
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